ニュースレター60号 P1~2
JWCTU講演会・カリフォルニア神学大学院日本校公開講座
「WCTUの働き」 講演要旨 アン・バーゲン世界WCTU幹事
禁酒運動は女性たちの祈りの輪から
WCTUの女性改革運動のすべてはルイスさん母子によって始まりました。毎晩酔って帰ってくる父親を嘆き、家庭を暗黒に引き込む父のために祈る母の姿を、息子のジョー君は見ていました。ルイス夫人が女性の祈りの仲間を作り上げ、ニューヨークの大衆酒場反対運動のために祈り、その酒場が閉店に追い込まれたこと、父親が母の祈りによって変えられたことを少年は目の当たりにしたのです。彼は後に医者になり、大成功しました。 1873年12月、100名の女性たちがニューヨーク州プレドニアの教会に集まって、酒の販売に反対する祈りの輪を広げていきました。やがて2,000近くの大衆酒場が閉店し、一般にも知られる活動になり、多くの新聞社が禁酒運動に関するコラム等の記事を載せるようになりました。
フランシス・ウィラードは1874年のピッツバーグでの祈りの輪に参加し、酒場が閉店になるようにクリスチャン女性たちが讃美歌を歌い熱心に祈る姿を見て、この女性改革運動に参加するようになりました。年末には全国大会でWCTU(クリスチャン女性禁酒同盟)という名前が採用され、ウィラードはこの運動が全米から全世界へと広がるヴィジョンをもちました。私は数年前、サンフランシスコにある、彼女が太平洋を見ながらWCTUが世界に広がっていくであろうという霊感を与えられたインスピレーション・スポットを訪ねたことがあります。
世界組織に広がる
1883年に世界WCTUが設立され、1891年のボストンでの第1回世界大会でウィラードは初代世界会長に選ばれ、世界大会は以後3年毎に開かれています。前回大会は2016年カナダのオタワで行われ、24カ国140名以上が集い、日本も参加しています。現在WCTUは世界30カ国に正式な組織があり、20カ国で始まりつつあります。中には会員1名というものもありますが、米国やノルウェーでは1,000名以上の会員がいます。
組織に大小はありますが、「神の助けによって、アルコールが広まらず減っていくように、薬物が世界からなくなるように」という同じ目的のために活動しています。薬物のない生活をする、クリスチャンの価値観をもった家庭や共同体ができるように、特に女性や子どもたちに具体的な助けの手が差し伸べられるように願っています。
WWCTU(世界クリスチャン女性禁酒同盟)の理事は、会長、4人の副会長、幹事、会計、記録書記の8名で、今後の計画などを話し合い、進めています。
WCTUは設立当初から組織的に活動してきましたが、社会の変化に伴ってその組織も変化し、現在は4部門です。伝道部の活動は、クリスチャンのメンバーが、「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」というマタイ7:12のみことばに立って信仰共同体に絶対禁酒を伝えること、教育部は、アルコール、タバコ、違法薬物の恐ろしさを皆に伝えることです。家庭保護部が強調するのは、クリスチャンホームの価値を広め、幼少時からWCTUプログラムを用いて絶対禁酒を教育し、アルコールの入っていない飲料を推奨することです。社会奉仕部は、助けを必要とする弱者、困窮にあえぐ人々に、人種、宗教、性別、年齢に関係なく手を差し伸べます。愛と支援によってイエス様の愛を分かち合うのです。
WCTUの働きには、薬物やアルコールの消費量を減らすよう政府に圧力をかけるという側面もあります。その結果、社会がアルコール、薬物の害から守られるのです。私の母国オーストラリアWCTUには、かつて「教育し、運動し、法律を制定する」というスローガンがありました。「教育する」とは、アルコールや薬物が社会をどう害するか、事実をしっかり教える手助けをすることです。ヴィクトリア州では学校で教育することがWCTUの重要な働きのひとつになっています。「運動する」とは、議会の議員たちにコンタクトして私たちの働きを知らせ、ノウハウを駆使して人々がアルコールや薬物を要求しなくなるような法律制定に向けて働きかけることです。そして、私たちが教育し、運動することによって「良い法律」が可決されるのです。これが「法律を制定する」です。オーストラリアや他の国々で、政府に働きかけたことによりタバコのパッケージにはっきりとした警告のメッセージを画像とともに入れることに成功しました。簡単にあきらめてはいけません。
困難な中でも世界各地で活動
WCTUの目標は、それぞれの国々の文化やニーズの違いによって、いろいろな形でアプローチされ、実践の仕方も変わっています。WWCTUは各地域ごとに働き人を指名しています。南太平洋の小さな国々、ツバル、フィジー、キリバス、ソロモン諸島、バヌアツ、サモア諸島、パプアニューギニアでは、人数は少なくても比較的若い女性たちが参加しています。彼女たちはセブンスデーアドベンチスト教会に出席している人が多いです。残念なことに、救世軍以外で絶対禁酒を支持しているのは、今や唯一セブンスデーアドベンチストだけになりました。そのため、伝統的な教団の若いメンバーたちにWCTUの働きに参加しようと呼びかけることが難しくなっています。人数が増えているペンテコステ派の教会は酒の害について、たしなむ程度ならいいだろうという価値観に立っているようです。飲酒やタバコ、薬物の害が家庭や共同体で問題を起こすのを見ているこれら南太平洋の島々のWCTUメンバーたちは、子どもたちや若い母親に、学校や教会を通して絶対禁酒のメッセージを伝えようとしています。
バヌアツはヤン・ジョー・キムさんがWCTUを立ち上げる努力をしてきました。6か月前から始まった禁酒運動に対抗するようにできたカバ・バーが閉店するように、神の御手による勝利を祈っています。12人のメンバーのひとりにカバ・バーのオーナーがいて、自分の店を閉じ、WCTUに参加しようとしています。神を賛美します。
支援し愛を分かち合う
アジア諸国のWCTUの活動の背後には強いキリスト教信仰の影響が見られます。それゆえ、FASDのための祈り、社会福祉事業への参加など素晴らしい働きがあります。日本では毎週WCTUの働きの土台としての祈りの会がもたれ、インド、韓国は教育に熱心で、WCTUを奨励する宣教師を派遣しています。彼女たちの働きの場はカンボジアで、新しくWCTUの働きが生まれ、首都プノンペンのすべての学校で教育運動が始まりました。ニュージーランドWCTUのメンバーは、参加したキリスト教の大会でプラカードを掲げ、メッセージつきのペットボトルを配布しました。
南米ではあまり活動は見られないようですが、中南米グァテマラでは、ヴァリエントスさんが素晴らしい働きをしています。2003年にノルウェーWCTUの支援でグァテマラWCTUが設立されました。デボラ財団は、犯罪組織と貧困による最も貧しい地域に住む女性や子どもたちが尊厳をもった暮らしができるように奨励し支援しています。生活様式をより良く改善させ、教育を通して暴力や病気、薬物から解放された生活が送れるよう働きかけています。グァテマラ政府とノルウェーWCTU、韓国WCTU、オーストラリア、アメリカのWCTUも助けていますが、これらの国々からの支援は今後期待できず、デボラ財団の存続が心配されています。政府の新しい支援が得られるようお祈りください。
ヨーロッパでは、次の世界大会(2019年)がフィンランドで行われる予定です。本部はヘルシンキにあり、9つの支部、400人の会員がいて、ホワイトリボンの情報を伝え、いろいろな行事で薬物の害を知らしめています。また、アルコールの宣伝を阻止し、法律を制定することでタバコの害を減らそうとしています。子どもたちや家族がともに働きかけをしています。フィンランド、ノルウェー以外ではあまり活動は見られません。長いことWCTUが活動している英語圏では、WCTUが高齢化していること、教会からの支持が得られないことに苦しんでいます。オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、さらにアメリカに於てもその傾向が見られます。
神に頼り、導きを求めて
オーストラリアでの最も大きな活動のひとつは学校での薬物教育です。12~13歳の中学生に対するプログラムでは、薬物は食料ではなく人体に悪影響を及ぼすもの、幻覚をもたせ、脳から体に送る信号を遅くするもの、刺激して人間をハイにするものであることを教えます。さらに、アルコールは飲んだ瞬間から脳に影響し、排出されるのには時間がかかること、脳が成長する十代の子どもたちの脳は特に悪影響を受けやすく、飲酒の時期が早ければ早いほどアルコール中毒のリスクが高まること、妊娠中の母親の飲酒が原因の胎児性アルコールスペクトラム障害(FASD)は、生涯にわたって障がいが残ってしまうこと、アルコールは、がん、肝臓病、高血圧、脳の病気等200もの病気と関わりがあることなどを伝え、全く飲まない絶対禁酒が最善の選択であることを教えます。さらに、いろいろな薬物の種類とその害を伝え、アルコールや薬物は人を狂わせ、依存症の奴隷にし、一度ついた悪習慣を打ち破るには苦痛が伴うものであることも伝えます。これらのアルコール、薬物の害は、画像や資料を使って具体的に視覚に訴えて教えます。
WCTUの存在価値は世界に於て未だにあるのでしょうか。全く疑うことなく必要とされています。アルコール、薬物の乱用は世界の大きな問題となっている今日、私たちは活動の手を緩めてはなりません。教育し、必要な法律を制定させるのです。私たちは、特に母と子を助けるという重要な役割を担っています。絶対禁酒を掲げる特異な存在であるWCTUは、現代の若者たちにアプローチするために、インターネット、フェイスブック、オンラインなど新しい方法を試して、時代遅れにならないことが大切なのです。私たちはクリスチャンの団体です。何を為すにおいても神に頼り、聖霊の導きを求めて活動を進めましょう。