矯風会 JWCTU

JWCTUとは世界クリスチャン女性禁酒同盟加盟団体(WCTU)の日本クリスチャン女性禁酒同盟です。

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ニュースレター64号P1~2より抜粋

聖書を読み、祈る母に育てられたエイミー・シュローズさん
ー迷子の子猫を飼い主の難民家族に返した女性ー

牛込キリスト教会 牧師/矯風会JWCTU顧問 佐藤 順

絵本『まいごのねこ』の出版

 2015年10月、7年前に夫をがんで亡くしたスーラさんは、5人の子どもたちと飼い猫のクンクーシュを連れて、紛争が続くイラクのモスルを脱出、安全なノルウェーを目指します。イラクではISの兵士が、スーラさんの16歳の長女を強制的に嫁に連れていこうとしていました。合法的にイラクから出る方法はないので、密航斡旋業者(難民運び屋)に一人当たり1000ドル払ってボートに乗せてもらうのです。密航斡旋業者からも虐待・レイプされることもあるので、まさに命懸けの出国です。ペットにも密航料金がかかるのですが、6人分支払うとペットの白猫・クンクーシュの分は無いので、猫はバスケットに隠して連れていました。そのクンクーシュが経由地であるギリシャのレスボス島で行方不明になってしまったのです。飼い主一家は必死に捜しましたが見つからず、仕方なくクンクーシュをレスボス島に置いたままノルウェーに向かいました。

 レスボス島で迷子の子猫を保護し、SNSを通して情報を発信し、4か月後、ノルウェーで飼い主に再会させたのが、米国人クリスチャン女性エイミー・シュローズさんです。そのいきさつを綴った絵本(『LOST AND FOUND CAT』)が『まいごのねこ』という書名で日本でも翻訳出版されることになり、それに合わせてエイミーさんが来日し、クリスチャン新聞の取材を受けました。

ギリシャ・レスボス島での難民支援活動

 エイミーさんは妹と二人で、母親によるホームスクールで教育を受け、15歳で高校のカリキュラムを修了。独り立ちしてアパート住まいをし、NPO法人で働き始めました。7年後、長期休暇を取ってヨーロッパを旅行中、ギリシャからインドに向かう列車に乗っているときに、逆方向を走る列車に大勢の難民が乗っているのを見て、支援したいという思いをもちました。そして、SNSでボランティア募集のサイトを見つけてコンタクトすると、ギリシャのレスボス島にいるマレーシア人のコックさんが、難民キャンプでスープを作って配っているが、足にけがをしたので手伝ってほしいとのことでした。

 コックさんに代わってスープを作り始めて2週間後、エイミーさんはクンクーシュを見つけました。(当時クンクーシュは名前がわからず、勇気を与えるギリシャ神話の神の名・ディアスと呼ばれていました。)エイミーさんは米国で犬や猫の里親を探すボランティアもしていたので、そのためか、テーブルに座って食事をしていたら、クンクーシュのほうからエイミーさんのテーブルに乗り、顔を近づけ、ニャオーと鳴いたそうです。 しばらくは餌をあげる程度の世話をしていましたが、ある日、難民250名を乗せたボートが座礁、エイミーさんと仲間4~5人で全員を海から助け出すことができました。そこで、ライフセーバーなしでも4~5名で座礁船の250名を助けることができるのなら、猫1匹をとことん助けることもできるという思いが湧いてきたとエイミーさんは言います。

イエス様の言葉を実践する
 エイミーさんは、母方の祖父がメソジストの牧師で、伯父、叔母、従姉に牧師がいるそうです。エイミーさんも母と教会に通っていましたが、妹2人と父親から虐待を受けて育ちました。虐待の事実をだれかに言ったら殺すと父親に脅されていましたが、11歳のときに虐待が発覚し、母と3人で別居。それ以来父から逃れるため、何度も引っ越しをしました。エイミーさん自身が「難民生活」を強いられていたのです。母は子どもたちが父親と会わないですむように裁判に訴え、5年かけてその権利を勝ち取りました。エイミーさんは13歳の頃から父親とは会っていないとのことです。  その間、母が聖書を読み、祈り、ノートに思いを書き込む姿を日々見てきました。母は弁護士費用を工面しながら、子育てとホームスクールをしてくれました。この経験を通してエイミーさんは何でも自分で決めて進むようになりました。フードバンクにもよく行きましたが、母は、貧しい中から、祖父からもらった食べ物をフードバンクに寄付していたそうです。母は常に、「人よりも神の言うことを聞きなさい」と教え、牧師の祖父は、「自分の手柄にしようと思わなければ、何でもできる」と教えてくれました。エイミーさんも、イエス様の言葉「人にしてもらいたいことは何でも人にしなさい」(マタイ7:12)という思いでボランティア活動を続けています。
子のために祈る母を大切にしよう
 そんなエイミーさんは、聖書を読み祈る日々を送り、祖母に会いに行ったときは一緒に礼拝に行きますが、定期的に教会には行っていません。それは、保守的なクリスチャンたちから、「○○をしたら地獄に行く、天国に行くには○○をしなさい」とばかり言われ、嫌になったからだそうです。これはキリスト教を律法主義のように誤解している悲劇です。その一方で、クンクーシュの飼い主はイスラム教徒です。米国人クリスチャンにはイスラムを異教の民として嫌がる人もいるなか、エイミーさんは真の人類愛、神の愛を実践しています。クンクーシュの出来事を通して、幼い頃に培われた信仰が復活していると彼女は言います。クンクーシュの親猫は、スーラさんの両親と共にイラクにいるので、クンクーシュはスーラさんにとって両親との絆でもありました。けれどもクンクーシュは、再会後4か月で、ノルウェーの伝染病にかかり病死してしまいました。自分の使命を果たして亡くなったのでしょう。  エイミーさんは現在、難民キャンプでの経験を生かして、米国内の地域社会で人々が集い、語り合うことで、互いの必要を見い出し、助け合う運動を始めています。また、飼い主が捨てようとしている馬の里親を探すボランティアにも携わっているということです。子どもを激励し、聖書の真理を教え、祈る母に育てられたことで、エイミーさんは神に用いられています。絶えず子のために祈り続ける母を大切にしたいものです。
※5月11日 牛込キリスト教会母の日礼拝における聖書講話の実例より
絵本『まいごのねこ ほんとうに あった、難民のかぞくのおはなし』  (岩﨑書店、A4変型判、1,836円)は書店でお求めいただけます。
 トルコの婦人たちが難民支援の思いを込めて手作りした、白い猫のお人形(クンクーシュ人形)をエイミーさんからお預かりしています。1体2000円で、1体につき8ドルが難民支援に役立てられます。ご購入くださる方は、事務局までご連絡ください。  ☎03・3205・3920

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