「祈りと幻」

A. 聖書は博物館行き?―ヴォルテール

 フランスの啓蒙思想家ヴォルテール(1694〜1778)はカトリックを批判し、「百年もすれば、聖書は博物館でしか見かけない忘れられた本になるだろう」と予言しました。それから百年後、彼の家は聖書協会の建物になっていたといいます。霊感を与えられたと思って発表した内容の真偽は、それが聖書の言葉と一致しているかどうかにかかっているのです。
 神さまは夢や幻を通して預言者に語りかけて来られました。新約聖書においても、ペトロが異邦人を受け入れなさいというメッセージの幻を見ています。

B.聖書より

(17)ペトロが、今見た幻はいったい何だろうかと、ひとりで思案に暮れていると、コルネリウスから差し向けられた人々が、シモンの家を探し当てて門口に立ち、(18)声をかけて、「ペトロと呼ばれるシモンという方が、ここに泊まっておられますか」と尋ねた。使徒言行録10章17〜18節
 ペトロは空腹を覚え、何か食べたいと思ったとき、大きな布のような入れ物に入ったあらゆる獣、地を這うもの、空の鳥が天から降りてくる幻を見ました。そして、それを食べるようにという声がしたので、ペトロは「主よ、とんでもない事です。清くない物、汚れた物は何一つ食べた事がありません。」と答えます。すると、「神が清めたものを、清くないなどと、あなたは言ってはならない。」とまた声が聞こえました。それは、古い慣習は捨て、悔い改めにより神さまの恵みを受けるという真理を確信するためのものでした。当時、使徒たちは、ユダヤ人以外の人がクリスチャンになるには、ユダヤ人の決まりの割礼を受けなければならないと思っていたのです。するとコルネリウスから送られてきた人たちが門口に立っており、聖霊が彼らと一緒に行くように言いました。ペトロの見た幻は、外国人の百人隊長コルネリウスを受け入れる準備となったのです。幻は、神さまの言葉をより鮮明に印象付ける手段です。ペトロはコルネリウスの使いの人から話を聞いて、幻の意味が分かったのです。

C. 白洋舎てんぷく事件

 明治39年、クリスチャンの五十嵐健司さんは、日本で初めてドライクリーニングを開発し、白洋舎を始めました。創業して10年、事業の基盤ができた頃、意外な事件が発生しました。病身のために遅刻や欠勤が多いMを適職に転出しようとしたのです。これを知ったMは工場の支配人と共謀し、白洋舎に在職したまま、新しく洗濯店を開いて白洋舎のお得意先を奪取していきました。そのやり方は、わざと品物を破損したり、納期を遅らせるなどして、お得意の感情を害し、白洋舎の信用を失わせ、自分たちの開いた店にお得意先を引きつけるという方策でした。そしてとうとう営業は休止状態となってしまいました。
 五十嵐さんは怒りの感情でいっぱいでした。いつも喜んで出席する礼拝にも、人をうらんだり、怒ったりしていて足が進みません。でもその事件を忘れるようにして、とにかく礼拝に出席しました。黙想しているうちに、イエス様は生命を奪おうとする敵を愛し、敵の罪を身に負って十字架の恥辱と苦しみを忍ばれたことを思い出し、その愛に対し、自分の心は何という無情であろうかと深い反省を与えられ、憎しみは敵対者のために祈るようにされました。五十嵐さんは裏切った人たちをのろう代りに、正しい道に戻れるように祈りました。そして、「復讐しない」という対処法をイエス様から示された五十嵐さんは、すべてを神さまにおまかせし、自分に協力してくれる残った従業員と共に、事業を以前の倍ほどに再建させました。
 一方、白洋舎をつぶそうとした人たちは、間もなく利害衝突で互いに仲間割れをして勢力を失いました。さらに火災を起して店は客の預かり品多数と共に全焼し、閉店してしまったのです。主謀者のMはその後、書面をもって謝罪の意を表して来ました。「その後私は本所石原町で洗濯店を営んでおりましたが、大正12年9月1日の大震災にあい、家族とともに被服廠(ひふくしょう)(軍服や軍靴を製造する工場)跡へ避難いたしましたところ、かろうじて私だけ助かり、家内と子供は焼死いたしました。これも神様の罰であると思っておわびを申し上げます」と、その内容は悲痛なる文句でした。五十嵐さんは襟を正して神のみことばの権威を感じました。そしてこの事件がきっかけで、五十嵐さんは、傲慢な心をすっかり砕かれ、自分の才知により頼むことなく、神さまの前に謙遜になり、今日の白洋舎の発展へとつながりました。

D.結び

 祈りの時に与えられたインスピレーションが、真実のものであるかどうか、健全なものであるか否かは、神さま神の言葉と御心に適った現実の裏付けがあって初めて、明確になります。祈りの中で正しい思いを与えていただき、神さまと人とを正しく愛するために導かれる人となりましょう。
御翼2009年12月号その3より


  
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