2017年御翼11月号その2

                           

戦時中も愛する日本に

 明治末期、若いアメリカ人女性が単身で来日した。アメリカ・ニユーハンプシャー州の牧師家庭に生まれたメーベル・フランシス宣教師(1880~1975)である。彼女は18歳の時、教師を辞めて伝道者となり、翌年、日本宣教の召命を受ける。1909年、アライアンス・ミッションの宣教師として来日し、おもに広島、愛媛など瀬戸内地域で数多くの教会を建て、福祉や教育にも貢献した。
 第二次世界大戦が始まると大使館からは退去勧告が出て、本国アメリカからも、「帰れるうちに帰るように」と何度も手紙が届く。しかし、フランシスにとって日本は敵国ではなく、神によって遣わされた愛する国である。「戦争が起きたからすぐに帰国」という選択肢は彼女にはなかった。
 戦時中はスパイ行為を疑う日本の警察に尾行されたり、母国からの爆撃におびえたり、ついには妹のアン宣教師と共に東京の強制収容所に送り込まれたりと、戦争が終結するまで苦難は続いた。戦後は愛する松山に戻り、戦争で傷ついた日本人の物心両面での復興を願って、宣教活動をはじめ福祉や教育面でも、目覚ましい働きを展開していった。
 1965年、妹の病のため帰国するが、彼女の優しさと実行力、あふれるばかりの笑顔に癒やされた人も多く、松山になくてはならない存在となっていた。そのため、松山市特別名誉市民となり、日本国からも、「勲五等瑞宝章」を授与されている。
熊田和子『天晴れ!ぶれなかった人たち』(フォレストブックス)より

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