2017年御翼12月号その4

                           

楽観主義を身につければ、壁を乗り越えることができる

 楽観主義は、世界や人生の価値や意義を究極的には肯定的に認める立場をいう。一方、悲観主義者は、何でも悪い方に悪い方に考える人のことである。全てを最善にしてくださる神への信仰を持つことは、正しい楽観主義を持つために必要不可欠である。
 米国ペンシルバニア大学教授の心理学者マーティン・セリグマン博士(米国心理学会の会長)は、楽観主義を身につければ、壁を乗り越えることができるという。そして、楽観主義者がたくさんいる会社は強いという。特に、粘り強さや大胆な夢を要求され、敗北感を味わうことの多いストレスの大きい職種では、楽観主義が価値を発揮することは明らかである。楽観的説明スタイルが必須条件である分野は次のとおりである。
 

●セールス ●仲買業(なかがいぎょう) ●広報 ●俳優など人前に出る仕事 ●寄付金を募る仕事 ●創造的な仕事 ●競争の激しい仕事  ●燃え尽きる(バーンアウト)率の高い仕事
 一方、悲観主義がかなり役に立つ仕事もある。悲観主義者は楽観主義者よりも現実を正確に把握する。以下の分野は、鋭い現実感覚を要求される仕事である。これらの部門は通常、競争もそれほど激しくなく、辞める率も低くて、プレッシャーの少ない状況での専門的な技術が必要となる。適度の悲観主義が長所となるのは次のような分野である。
●設計・安全工学  ●技術・コスト見積もり  ●契約交渉  
●財政統制・会計  ●法律(訴訟を除く)  ●経営管理 
●統計   ●テクニカルライティング   ●品質管理 
●人事・渉外管理(外部と連絡・交渉すること)  以下の場合は楽観主義が有効である。
●何かを達成しようとしているとき(昇進、製品販売、難しい報告書の作成、試合)。
●自分の気持ちを高めよう、落ち込まないようにしようとしているとき。
●困難な状況が長引きそうで、自分の健康状態が問題になっている場合。
●指導的役割を演じたいとき、他の人々を啓発したいとき、自分に投票してもらいたいとき。
 楽観主義でいくかどうかの基本的ガイドラインは、その状況で失敗した場合どうなるかを考えることである。もし失敗が高くつくようであれば、楽観主義は勧められない。パイロットがもう一度、翼の氷を取り除く作業をしたほうがいいかどうか迷うとき、パーティーで飲んだあと、車で帰宅しようかどうか考えるとき、配偶者との不仲から、不倫しようかと思うとき…失敗した場合にはそれぞれ死、交通事故、離婚の危険性がある。一方、もし失敗しても大した被害はない場合は、楽観主義で行くべきである。もう一回売り込みの電話をしようかどうか迷っているセールスマンは、失敗したとしても時間を損するだけだし、新しいスポーツを習おうとしているティーンエイジャーは、たとえうまくいかなくても落胆するだけである。
マーティン・セリグマン『オプティミストはなぜ成功するか』(講談社文庫)より

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