2017年御翼5月号その2

                           

自分はダメだと思う者は成功できない―― N・V・ピール

  ピール牧師が、ビジネスマンの会議で講演をした後、実業界のリーダー的存在のある男性が、自分の息子のことで相談に来た。二十九歳の息子は、大学では優等生だったが、何度職を変えても失敗するという。「秀才が学校を出ると、役に立たないというケースはよくあることです」と父親は言って、ピール牧師に息子を変えて欲しいという。その息子と会ってみると、好青年であったが、自信喪失症だった。彼は自分について否定的なことを言った。①自分には父親ほどの力はない、②大学の成績がよかったのはまぐれだ、③自分には独創性がない、④何の才能もない、⑤自信がないと自分でも認めている。
 ピール牧師はこう助言した。「これほど自分はダメだと思っている者が、どうして仕事で成功できましょうか。あなたは無意識のうちに父親と張り合い、とうていかなわないと思うようになったようですが、自分が張り合う相手は自分をおいて他にはない。自分のよいところを数えてみたらいかがですか。①立派な体格、②礼儀正しい、③愛想がいい、④人柄がよい、⑤父親とは違った才能をもっている…」と。そして、牧師はヘンリー・カイザーの成功の秘訣を教えた。

ヘンリー・カイザー(米国の実業家)の五か条の成功の秘訣
一 自分自身を知り、自分は一生かけて何をやるのか、ライフワークを決める。それから到達目標と計画を紙に書き出す。
(ヨハネ12・24 「一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ねば、多くの実を結ぶ。」)
二 信仰を通して未開発の強力な力、心や意識下に埋もれているエネルギーを開発する。(詩編139・14 「わたしは恐ろしい力によって/驚くべきものに造り上げられている。御業がどんなに驚くべきものか/わたしの魂はよく知っている。」)
三 人を愛し、人のために尽くす。(マルコ12・31「隣人を自分のように愛しなさい。」)
四 自分の長所を伸ばす。(ペトロ第一4・10「あなたがたはそれぞれ、賜物を授かっているのですから、神のさまざまな恵みの善い管理者として、その賜物を生かして互いに仕えなさい。」)
五 しっかり働く。一生の計画を決然と実行に移す。めざすものを全力で追い求める。(コリント第一9・24 あなたがたは知らないのですか。競技場で走る者は皆走るけれども、賞を受けるのは一人だけです。あなたがたも賞を得るように走りなさい。)  (聖句は佐藤 順による引用)
 ピール牧師は、次の面会までに、誰か挫折した者を見つけて、その人の力になってあげて、更にライフワークとして自分は何をしたいのか考えておくよう指示した。二週間後、青年は次のように報告した。「たまたまクラスメートのアルビンに会いました。大学を出て以来、初めてです。アルビンの父親は大学教授で、息子に自分と同じ道を歩ませたがっていましたが、本人は大学ではBしかとれず、父親から教授になるために必要な学位は絶対とれないと言われました。ぼくはアルビンには音楽の才能があり、そっちに進みたがっているのを知っています。そこで、自分のやりたいことをやるようハッパをかけました。そして先生がぼくになさったとおり、臆病風に吹かれたら自分の長所を数えてそれを吹っ飛ばすようアドバイスしました」と。更に、彼は自分のライフワークについて語り出した。彼は友人が経営する、エグゼクティブをスカウトする事務所で働き、やがて独立したいと言う。「しかし、父が反対するに決まってます」と彼は付け加えた。ピール牧師が、「クラスメートには、自分のやりたいことをやるようにハッパをかけたのでしょう」と励ますと、彼は決意を固めた。
 数年後、彼の父親が「息子のことを先生にお願いしたのは正解でした。息子は今では業界の第一人者になっています」というので、ピール牧師は青年に会いに行った。彼は立派なオフィスにいて、「あのときの先生のアドバイスが、どこからきたのか分かっていますよ。これでしょう。あれは確かに有効でした」と言って、引き出しから聖書を取り出し、「これはいつでも手元においてあるのです」とつけ加えた。 
N・V・ピール『生きるって素晴らしい』(ダイヤモンド社)より
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