2017年御翼8月号その2

                           

ポジティブ心理学のセリグマン博士

 「フロイト以来の革命的理論家」と評される、米国ペンシルバニア大学心理学部教授のマーティン・セリグマン博士は、一九九六年、米国心理学会の会長となった。そのとき博士は、心理学が肝心のところで人の助けになっていないことに気付いた。それは、人はどうすればより幸せになれるか、という問題である。「誰もが幸せになりたいのに、二十世紀の心理学は、憂うつ、精神的外傷、苦難といった、否定的なことばかり研究してきた」と博士は言う。心理学は、精神的障害のための学問のようになってしまっていたのだ。そこで博士は、幸せになるための心理学、ポジティブ心理学を提唱している。
 本来、心理学は、弱さや障害だけを研究するものではなく、人間の優れた機能を研究するものでもあるべきだと博士は言う。つまり、心理学の応用は、弱いところを補い、援助するためだけではなく、人間の持つ良いものを育むということにも向けられるべきだというのが、ポジティブ心理学である。

 ポジティブ心理学者たち五百人が挙げる、幸福な人生を構成する八項目は以下のとおりである。
① 祝福を数える Count your blessings.  
② 親切を実行する Practice acts of kindness.
③ 人生の喜びを味わう Savor life's joys.
④ 良き指導者に感謝する Thank a mentor.
⑤ 赦すことを学ぶ Learn to forgive.
⑥ 友人や家族のために金とエネルギーを投資するInvest time and energy in friends and family.
⑦ 身体の健康を気遣う Take care of your body.
⑧ ストレスや困難への対策手段を持つ Develop strategies for coping with stress and hardships.
これらは、信仰を持つ者が得意とする項目である。

更に、セリグマン博士は、幸福を構成する三つのことを特に主張する。
① 笑顔(楽しみをもつこと、前向きな感情)
② 何かに深く携わる人生(仕事、愛、友情などに没頭するくらい夢中に携わること)
③ 意味のある人生(自分の命よりも大きなことに仕えるため、自分の才能と力を最高に形で使うこと)という幸せである

 いつも笑顔でいる人は全体の約50%で、遺伝的なものだと博士は言う。笑顔でいられる人生は幸せである。しかし、生まれつきあまりニコニコしない人たちは不幸だということではない。他の二つの条件を満たせば、人は幸せでいられる。何かに夢中になれること、そして、自分の賜物が何であるか見極め、それを自分よりも大きな目的のために献げることである。
 セリグマン博士は、これらを誰よりも持ち合わせていると見えるのがシューラー牧師である、と言う。シューラー博士は、その宣教・牧会活動において、この三つの幸せの形態を実現していた。いつも講壇から笑顔で聖書のメッセージを語り、会衆と目を合わせ、皆としっかりと結び合って仕事をしていた。そして、神という大きな存在に、賜物を献げ、命をかけて仕えていた。人が幸福感を持つには、楽しみを持ち、関わりを築き上げ、意味を感じなければならない。それを実行しているのは、セリグマン博士の同僚の学者でもなければ、政治的指導者たちでもない。それは、シューラー牧師であると、博士は感じたのだった。キリストにある喜びや平和や力を実証しているのが、シューラー牧師である。そのシューラー博士も、 2015年4月、88歳で天に召されている。それは、苦難に遭っても、上記の項目は信仰により実行した人生であった。

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