2018年御翼5月号その1

                           

歌謡曲「人形の家」の真意―― 作詞家・なかにし礼

 その1
 1969(昭和44)年、百万枚を売り上げた「人形の家」(作詞・なかにし礼)という歌謡曲がある。「私はあなたに命をあずけた」という失恋の歌であると、国民は思っていた。昨年、なかにし礼さんがこの歌詞の真の意味を発表された。それは、満州で生まれ、敗戦時、6歳で日本に引き揚げるときに、日本国に捨てられた体験を歌っているのだという。
 なかにし礼さん(本名は中西 禮三(れいぞう))、現在79歳、両親は、昭和八年、満州に渡り酒造業で成功を収めていた。敗戦後、満州からの引き揚げでは家族とともに何度も命の危険に遭遇する。「満州で敗戦を迎えた私たちは三度にわたり、国家から見捨てられたわけです。一度目は、関東軍によって棄民されます。二度目は、『居留民はできるかぎり現地に定着せしめる』という外務省からの訓電です。そして三度目は、引き揚げ政策のGHQ(連合国軍総司令部)への丸投げでした」と中西さんは言う。

人形の家          作詞・なかにし礼
顔もみたくないほど あなたに嫌われるなんて
とても信じられない 愛が消えたいまも
ほこりにまみれた人形みたい
愛されて捨てられて 忘れられた部屋のかたすみ
私はあなたに命をあずけた

 これは、日本国に捨てられた思いを、失恋の歌にして訴えたものだった。「昭和二十年までの軍国主義によってどれだけの人を悲しませ、苦しませ、犠牲にしたか。そして愚かな戦争によってどれだけの若者たちが無駄死にし、犬死にし、飢え死にしたでしょうか。そして、中国人や韓国人に対してどれだけの過ちをしたか。そうしたことを本当はもっと国民に知らせるべきなんです」と中西さんは言う。(2017年8 月15日 東京新聞 朝刊)

 「核兵器なき世界」を揚げるオバマ米政権が2009年に発足した当初から、日本政府は米国の核兵器は必要だと米側に強く訴えていたことがわかったという。中国や北朝鮮に対抗するため、核軍縮よりも米国の「核の傘」への依存を優先し続ける日本政府の姿勢が浮き彫りとなっている(朝日新聞2018年4 月1 日)。広島で被爆した三歳の男の子が、「ヒコーキ、恐ろしいね。お水おいしいね」と言い残して、亡くなりました。その子の姉・小谷孝子さんは、「核は必要悪などではない。全く不要なのだ」と訴える。日本は唯一の被爆国として、軍備に頼らず、神に信頼し、正義と愛によって立つ模範を世界に示す使命があるのではないか。「剣をとる者はみな、剣で滅びる(マタ26・52)」との御心を心に留めよう。

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