2018年御翼7月号その4

                      

アメリカ大使館移転の背景

 「『神の国』アメリカ 大使館移転の背景 イスラエル支援のよりどころは」という見出しが、朝日新聞(2018年6月28日)に載っていた。トランプ大統領は米国イスラエル大使館をエルサレムに移転した。これを「福音派」と呼ばれる米国人クリスチャンが支持している。福音派は、聖書の記述を、一字一句忠実に信じる米国最大の宗教勢力で、人口の約三割を占める。ヨハネの黙示録には、イエスが再臨して最後の審判を下すと預言されているが、ユダヤ人がエルサレムに集まることが、再臨の条件となると彼等は主張する。
 ところが使徒パウロは、ガラテヤ人への手紙3章28節で、「ユダヤ人もギリシア人もなく、奴隷も自由人もなく、男と女もありません。あなたがたはみな、キリスト・イエスにあって一つだからです」と言っている。従って、真のエルサレムとは、救われた者たちが集められる神の国のことであって、第三次中東戦争でイスラエルが武力で奪った東エルサレムは、聖書のいうエルサレムではない。ユダヤ人たちが、アラブ人を追い出してでも、エルサレムに集まればキリストが再臨する、などとするのは誤った解釈である。
 キリスト教徒がユダヤ人のエルサレム帰還を支援する考え(シオニズム)は、19世紀末頃、米国に渡って、あたかも純粋な信仰として広まった。その背景には、英国でピューリタンが生まれた時に強調された終末論がある。彼らは、信仰を自由に実践できる新天地を求めてアメリカ大陸へ渡った。ところが、キリスト教化と文明化のためには、先住民を虐殺してもよいという理屈を生み出す。「先住民は、開拓すべき自然」だと考えていた。
 近年、アメリカではキリスト教徒としての自覚を持つ人間が減っており、ビュー研究所の調査では、それは70.6%だった(一九六七年の時点では98%)。英国国教会(聖公会)の教会は一年に25も閉鎖されており、国勢調査によれば、2001年に72 %いた信徒数は、10年後の2011年では59%に減少している。

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