2019年御翼5月号その2

                           

ハドソン川の奇跡 C.サレンバーガー機長

 二〇〇九年一月、ニューヨークのラガーディア空港を離陸して上昇中のUSエアウェイズ1549便は、カナダガンの群れと衝突(バードストライク)、両エンジンが破壊され、ハドソン川に緊急着水した。操縦していたサレンバーガー機長は、離陸から着水までの僅か3分28秒の間に、エンジンは再始動せず、空港へは引き返せないこと、高度(ニューヨーク上空880m)、速度は時速370㎞、油圧系統は作動するなどを確認し、飛行機をグライダーのように滑空させてハドソン川に着水することが最善であると判断し、乗客乗員155名全員の命を救った。
 サレンバーガー機長は、ユナイテッド・メソディスト教会の活動的な会員だった人で、神と人とに仕えるイエス様の教えを実践してきた。機長として飛行機の安全を守り、クルーや地上スタッフへの気配りもよくする人物として知られていた。「リーダーは、責任下の人々すべての幸福に対し責任があるのです」と彼は言う。そして、家庭でも、妻と共に直面してきた数々の試練を、残された手持ちのカードを使って、使える資源をすべて最大限に生かす努力をしてきた。たとえば結婚当初、サレンバーガー夫妻は、不妊の問題に悩まされ、不妊治療も不成功だった。すると、妻は「私たちの目標は妊娠することじゃないわ。子供を持つことよ。ほかのやりかただってあるじゃない」と言い、二人は養子を迎える。「結婚生活が長くなるにつれ、私たちは、持っていないものよりも手元にあるものを大切にすべきだと強く思うようになった。二人の間に生じたいくつもの嵐をくぐり抜け、今では二人の一体感はこれまでにないほど強い。ローリーと私は、互いに感謝し合い、家族がともにある毎日に感謝しようと誓った。この前向きな姿勢を守れないこともあり、口論になることもある。だがこれが私たちの目標だ」とサレンバーガー機長は語る。普段から感謝の気持ちを忘れず、残されたものを最大限に生かす努力をしてきたことが、今回の事故の対処に良い影響を与えた。事故後ある乗客は、「私の人生はここで終わりではなかった。一日一日が大切な贈り物のように思えるから、勇気が沸いてくる」と言った。サレンバーガー機長も、「あの飛行機に乗っていた私たち全て、二度目のチャンスが与えられたのだと思っています。愛する人たちと再び歩むことができる二度目のチャンスを」と語った。
 自分の責任下にある人々の幸福を願い、献身的に職務を果たす機長の姿は、霊を御手にゆだね、使命を全うされたキリストに倣うものである。イエス様にゆだねたとき、滅びるはずの私たちの魂に命が与えられ、人生を再びやり直す機会も与えられる。


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