2019年御翼6月号その4

                           

赦しこそ、人間が選ぶべき選択肢 ―― ジェラルド・G・ジャンポルスキー博士

 「人生の道の途上で出会うすべての人は、ゆるすこと、愛すること、神が存在することを教えてくれる先生なのです。そう思えば、人生は新しい意味と目的を持つものになります。」とクリスチャンの精神科医ジェラルド・ジャンポルスキー博士は言う。人生に偶然の出会いはなく、人は誰もが平等で、互いに先生で、生徒であることがわかると、すべての関係が、お互いの内に愛の存在、神の存在を体験するための新しいチャンスとなるというのだ。
 ジャンポルスキー博士の著書のテーマは一貫して「赦し」である。人の生きる目的は、内なる安らぎを得ることであり、それを実現する道は、赦しなのだ、と博士は言う。そもそも、キリスト教において赦しはいつも中心のテーマである。互いに赦し合い、受け入れ、神の愛に満たされて平安に生きること、これが人間らしい生活なのだ。 
 ジャンポルスキー博士は、まずは相手を愛し、赦すように決意しなさいという。
「あなたは、すべての人々を批判せずに受け入れようと、一日だけでも気持ちを集中して、努力したことがありますか。今日一日、内なるやすらぎが唯一のゴールであることを肝に銘じて、次の考えに全意識を集中してください。『私は今日、起こる出来事のすべてを批判的には見ないことにしよう。すべての出来事は、愛を実感できるひとつの機会なのだから』」と。そうすることで、世界にあふれる愛や美しさ、人の短所ではなく長所のみを意識的に見るようになる。争いの多い世の中で私たちがやすらぎを感じるためには、ほかの人が変わる必要はない。キリストの恵み(十字架による罪の贖(あがな)い)を知っている私たちが真の愛をもって人に接すれば、やがて互いが平和を見出すようになるのだ。
 以下は、恵みを知り、人や環境を許せるようになるための指針である。
 生き方を変える12の原則
      ジェラルド・G・ジャンポルスキー博士
(1) 人間存在の本質は愛
(2) 「健康」とは内なるやすらぎ、癒しとは怖れを手放すこと
(3) 「与えること」は「受け取ること」
(4) 過去や未来は手放せる
(5) あるのは今の時間だけ…どの瞬間も与えるためのもの
(6) 人を愛し、自分を愛するようになるには、批判をやめて、許すこと
(7) あら探しの名人ではなく、愛を見つける人になれる
(8) 外で何が起きようと、私たちは内なるやすらぎを選び、 内なるやすらぎへと自分を導くことができる
(9) 私たちはお互いに、先生と生徒である
(10)断片的に人生をとらえるのではなく、人生全体に焦点を当てることができる
(11)愛は永遠だから、死を怖れなくてもよい
(12)他人や自分をみるときは、「愛を与える人」か「助けを求めている人」かを見ること(怒ったりわめき立てたりする人に出会ったら、この人は愛が足りなくて苦しんでいるのだと考えると、どんなときでも役に立つ。愛と優しさをもって応じれば、その人の叫びにこたえて、心を開くお手伝いができるかもしれない。)

 イエス様は敵が謝りに来るのを待つことなく、相手を先に赦された。その姿に倣う私たちも、相手を無条件で赦すべきなのだ。これが私たちの平安への道であり、神の国の祝福を得る近道である。あらゆる人間関係は、赦しを実践するためにある。
 そして、敵を赦す動機として、しばしば、キリストの十字架上の赦しの言葉「父よ、彼らをお赦しください。自分が何をしているのか知らないのです」(ルカ23・34)が引用される。ベトナム戦争で第3度の火傷を負い、35%の皮膚を移植した、当時9歳だったキム・フックさんも、この御言葉に触れ、空襲をした「敵」を赦そうと決意した。すると、「顔と手は火傷を免れてきれいだし、爆弾が落ちたとき、足はやけどしなかったから、走って火事から生き延びることができた」、と感謝できるようになったという。人を無条件で赦せるのは、ストイックにそうする、と決めなければならないというよりも、悪を上回る恵みが隠されているから、あるいは既に与えられているから、敵を赦せるのだ。実際、キム・フックさんの場合も、そこに至る前に、神はクリスチャンの友を与えてくださり、信仰の悩みを何でも彼女に打ち明け、相談でき、教会に通うようになれたのだった。


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