2019年御翼8月号その4

                           

カナダ人宣教師キャロライン・マクドナルド

 カナダ人宣教師、キャロライン・マクドナルド(1874〜1931明治の終わりから昭和の始めまで、日本で活動)は、日本YWCA(キリスト教女子青年会)の創設者である。カナダ開拓者の家庭に育った彼女は、「私自身開拓者でしたから、新しいことを始めるほうが、出来たものを改善するよりもおもしろいと思っています。」と言っている。
 富士見町教会でバイブルクラスを教えていたキャロラインのもとに、ある日、そのバイブルクラスの男性が妻と幼い息子二人を殺害し、17年の懲役、との知らせが入った。キャロラインは、控訴審での減刑を祈るが、判決は終身刑となった。祈りは聞き入れられなかった。しかし、彼女はこの、より重い判決のなかに神の働きを感じていた。「軽い判決は人を喜ばすだけかも知れませんが、これは人を神に導きます」と。そしてキャロラインは、受刑者の救済活動(刑務所の改善)、女性の教育、労働運動などを指導するようになる。それまでの日本の刑務所は、受刑者を罰することが目的であり、犯罪歴も一生涯、子どもの戸籍にも記録されていた。そのため、より悪くなって出所する受刑者が多かった。それを、受刑者の人間性の改善を目標にするように改革していった。殺人を犯した青年は十数年後、減刑され出所し、彼は再婚してキャロラインの受刑者たちへの宣教活動を助けた。
 1924(大正13)年、キャロラインは天皇から、教育と社会事業の領域で活躍した者に与えられる勲六等瑞宝章(ずいほうしょう)を授与された。天皇の紋章と司法大臣の署名と印のある証書には、彼女の働きに感謝する言葉として、「神の福音の伝播(でんぱ)」も言及されていた。これほど明瞭にキリスト教的な文句が、この種の公式文書に用いられた前例はなかった。キャロラインは、自分の活動の根源にある動機が、公に認められたことを喜んだという。
 バイブルクラスの青年の犯罪を阻止出来なかったことと、彼の減刑の祈りは、直ぐにはきかれなかった。しかし、開拓者キャロラインにふさわしい業が行えるよう、神は導かれた。「神は私になすべき仕事をお与えになりました。そして必要なものもお与えになります―強さ、純粋さ、愛―そして、変わることのない神ご自身の愛も」と彼女は言う。

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