2019年御翼9月号その4

                           

世界を目指した2人! 国境を超えた絆

 2016年のリオデジャネイロオリンピック、柔道女子70キロ級決勝戦で、金メダルに輝いた田知本(たぢもと)選手に、対戦相手のコロンビア人ジュリ・アルベアール選手が、日本語で「ありがとうございます」と言った。ジュリ選手には、日本人の早川コーチが指導にあたっていた。
 コロンビアで、貧しい日雇い労働者の家に生まれ育ったジュリは、貧困から抜け出すため、柔道をしていた。コロンビアでは、試合の結果に応じて報奨金が支払われる。オリンピック出場という好成績を収めたジュリ選手は、大学進学を果たしていた。更に、家族のために試合に勝って、賞金を稼ぐため、日本人コーチがコロンビアに来たことを知り、早川の弟子となる。すると、ジュリ選手は世界柔道選手権で優勝した。コロンビア初の快挙であったが、このときジュリ選手は胸に十字を切っているので、カトリック信者だと分かる。
 早川が赴任して3年後のロンドンオリンピックで、ジュリ選手は銅メダルで終わった。そして迎えた二〇一六年リオデジャネイロオリンピック、ジュリ選手は3度目のオリンピックの舞台に立つが、決勝戦で敗退する。かつては、勝ちにこだわっていたジュリ選手には変化が生まれていた。 試合後の挨拶の時、ジュリ選手は敗れた日本の田知本選手に、日本語で「ありがとうございました」と敬意を表したのだ。「金メダルを逃してとても悔しかった。でも負けたとはいえ、決勝で戦えたことへの感謝の気持ちが湧き上がり、自然にありがとうございますって言葉が出たんです」とジュリ選手は言う。柔道の創始者嘉納治五郎が、柔道の精神として唱えた言葉がある。『自他共栄』自分と他人が相互に融和協調して共に生き栄えること、それほど大切なものはない。
 ジュリ選手は試合で得た賞金で両親のために自宅を新築し、自身が生まれた村の貧しい子どもたち全員にクリスマスプレゼントを贈っている。また、小さかった柔道場の横には、今、ジュリ選手の名前を冠した体育館が建設中である。
 ジュリ選手は、「自他共栄」という柔道の精神こそ、イエス様の教えに通じるものだということに気づいたのであろう。イエス様の教えを実践する手段として柔道を続けた時、それは自分と自分の家族を救うだけでなく、コロンビアの社会にまで影響を与えるものとなった。

奇跡体験!アンビリバボー「世界を目指した2人! 国境を超えた絆」2019.8.22放送より


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