2020年御翼8月号その4

         

クリスチャンだった台湾の元総統・李登輝

  台湾の元総統の李登輝(リ トウキ)が7月30日、天に召された(97歳)。李登輝は1988年 - 2000年、中華民国(台湾)の総統として、共産党独裁から台湾を守り、一滴の血も流さず民主化に尽力した。李登輝は旧制台北高校から京都帝大(元京大)に進学、「僕は22歳まで日本人だったんだ」と、産経新聞の取材に自分のアイデンティティを語った。
 台湾民主化の父と呼ばれた李登輝は、「日本精神」についてこう語った。これは2002年11月、慶応大学で学生向けに話すはずだったが、訪日ビザを日本政府に拒まれ、語れなかった原稿からである。「いま、私たちの住む人類社会は未曽有(みぞう)の危機に直面している。危機竿頭(かんとう)に面したとき、日本人に対する国際社会の機体と希望はますます大きくなる」と。数千年にわたり積み重ねてきた日本人が、最も誇りと思うべき普遍的価値である日本精神が、必要不可欠な精神的な指針なのではないか」と。その実例として李登輝は、戦前の台湾で、東洋一とされたダムを作った日本人技師・八田與一(はったよいち)を挙げた。台湾農民のために八田は生涯をささげた。李登輝は高校時代、新渡戸稲造の「武士道」を読み込んだ。[産経新聞令和二年(2020)7月31日]
 学者の世界から政治に飛び込んだ李登輝は、30代半ばで洗礼を受けたクリスチャンであった。そして、困難に直面するたびに聖書を開き、祈って来たという。例えば、一九八八年一月、蒋経国総統が急逝し、その夜に総統に昇格した李登輝は、国家を背負う重責の大きさから、なかなか寝付くことができなかった。そんな夫を見かねて、夫人が「お祈りしましょう」と聖書を出してきた。李登輝夫妻のやり方はいつもこうだ。聖書を両手で持ち、当てずっぽうに開く、そして開かれたページに書かれた文言を読むというものである。そこにはこう書かれていた。「わたしは常にあなたと共にあり、あなたはわたしの右の手を保たれる。あなたはさとしをもってわたしを導き、その後わたしを受けて栄光にあずからせられる(旧約聖書「詩篇」第73章23~24節)」これを読んだ李登輝は、安心して眠りにつくことができた。
 李登輝は2015年、こう語っている。「私はクリスチャンです。クリスチャンに必要なのは、私の心の中にあるイエス・キリストに従って物事を処理して行くこと。政治の面で言えば、個人的な考え方、自分の個人的な利益を中心にしないで、人民のため、国のために奉仕することです。私の安倍総理に対する高い評価は、国のために奮闘しているからです。台湾人は日本のやり方に対して高い評価を与えております。その証拠に、東日本大震災に台湾人が寄付(10億円)するような態度を見ればはっきりするわけです。指導者として一番大切なことは、自分を忘れて国のために奮闘、そして人民のために奮闘すること。これが長い間日本でも忘れられております。日本では、戦後の教育改革、日教組による教育の仕方、それが日本に非常な過ちをもたらしております。なんとかして日本を昔のような国に取り戻せるよう、戦後におけるこの状態から脱することが非常に大切であります」と。


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