2021年御翼1月号その3

       

明治天皇と昭和天皇と私―― 小林隆利(たかとし)牧師

 明治天皇の孫 小林隆利牧師は、「明治天皇と昭和天皇と私」という公演を一九九六年に行った[その内容は、HAZAH(ハーザー)二〇〇一年二月号(マルコーシュ・パブリケーション)に掲載された。小林隆利牧師は、明治天皇の内親王・仁(しのぶ)様の長男(すなわち明治天皇の孫)として、大正14年に名古屋に生まれた。]
 明治天皇は、明治2年(一八六九年)から、長崎より招かれたフルベッキ宣教師・博士によって聖書の学びを始めた。このとき討幕派の三条実(さね)美(とみ)が迎えに行って、日本は新しく変わったので、日本の政府を作るために助けてください、と依頼したのだった。明治天皇には、二万七千もの御製(ぎょせい)(天皇の作られた詩文・和歌)があるが、その80~85%は聖書を知らないと理解できない。例えば、
 ・おのが身は かへりみずして 人のため つくすぞ人の つとめなりける
 これは明治天皇がイエス様の十字架の贖罪のみことばによって心動かされたことを表している。
・目に見えぬ 神に向ひて 恥じざるは 人の心の まことなりけり 
 イエス様の十字架の贖罪がどんなに尊いものか存じておられた明治天皇は、ご自分の娘(小林牧師の母)に、「男の子が生まれたら牧師にしなさい、役に立つ時が来るぞ」、と厳命なさった。明治天皇が一番愛読された聖書の個所は、詩篇133編、「見よ、同胞(はらから)合い睦みて居るがいかに良き、楽しからん。…」(「見よ。兄弟たちが一つになって共に住むことは、なんというしあわせ、なんという楽しさであろう。…」)であった。明治天皇の名は〝睦(むつ)仁(ひと) 〟であり、ご自分の名前が出ているこの聖句、詩篇133篇が愛唱の句であったことを、明治天皇の側近はよく知っていた。
 明治天皇に聖書を教えた人は、他に、内村鑑三、新渡戸稲造、塚本虎二(東大の聖書学・教育学者)がいる。この塚本虎二のお弟子さんに、長谷川町子がいた。サザエさんの漫画を描いた長谷川さんをクリスチャンに導いたのが塚本虎二だった。

 内村鑑三は明治天皇に対する不敬罪(対、教育勅語)に問われた。東大・駒場の教養学部(昔の一高)の教員のとき、明治天皇の御名(おそらく直筆ではなくその複写)に対して最敬礼しなかった。すると、他の教授たちから非難を浴び、大学に居られなくなった。内村鑑三は名古屋や熊本に行っても、非難中傷されたが、一度も妬んだり、恨んだり、そしった事はない。内村は、「迫害する者をのろわず、祝福しなさい」ということを全うした。後に明治天皇は、内村鑑三を誉め、あれが本物だと評価され、再び招かれて明治天皇に講義をし始めている。内村鑑三のそのクリスチャンとしての姿勢が、天皇家のみならず、宮内庁の職員など、いろいろなところに波及し、非常に深い影響を与えたのだった。
一方、昭和天皇は、宮中に定期的に牧師を招き、侍従長を始め周囲をクリスチャンで固めていた。また、平成天皇のためにクリスチャンの家庭教師(女性)を招き、音楽の教育にカリスマ派のクリスチャンを招いていた。平成天皇は皇太子時代、牧師から聖書講義を受けていたという。
昭和天皇は太平洋戦争の開戦に猛反対であったが、軍部が昭和天皇を抑え込んで無理やり開戦のための判を押させた。そのときから、昭和天皇は戦争責任をはっきり自覚されたという。終戦の頃、日本も原爆の研究をしていた。昭和天皇は、原爆開発の総指揮官、杉山元帥を呼び出し、開発をやめるよう言ったが、杉山は帰ってからまた開発を続けた。すると昭和天皇は烈火のごとく怒って「原爆中止、やめなさーい」とどなり、原爆をやめさせた。
昭和天皇は、ご自分を処刑する立場にあったマッカーサー元帥に向かって、「国民のためにどうなってもよい」と言われたと一般には思われている。しかし、本当に言われた言葉は、「私は罪だ、私を処刑しなさい」だった。普通、戦争に負けた国の王様は逃げるか、殺されるか、自殺するかである。更に、昭和天皇は、「『罪』という言葉はどこからきたのですか」と言われた。その一言で、昭和天皇がどんなに深く聖書を学んでいるか分かる。本当の意味での〝罪〟の意識は、聖書による以外にはないのだ。それを聞いて、マッカーサーは大変驚き、最高の心をもってこの方に仕えようと変わったのだ。マッカーサー自身もクリスチャンで、軍服のポケットにいつも聖書を持っていた。マッカーサーは自分が防波堤となって、昭和天皇を助けることにしたのだった。後になって昭和天皇は、何度も何度も、マッカーサーでよかった、とおっしゃっていた。
 小林牧師はこう言う。「日本の国で、皇室のつながりを持っている私が牧師である、母が明治天皇の命令で、小さい時からずっと教会に連れて行ってくれた、今になってそれが大きな神様の恵みとなって来ている。重荷を全部負って、国民の罪も、兵隊の罪も、軍部の罪も負って、私は罪だ、私を処刑しなさい、と言うほどに、イエス様のようなご人格をもった天皇陛下が日本にはいる。ハレルヤ。皆さん、日本のために、天皇家のためにも、祈っていただきたいと思います」と。

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