2021年御翼10月号その2

       

ゲーリー・チャップマン『赦しをもたらす5つの方法』 

傷つけてしまった相手に対して、適切な謝罪の言語は以下のとおりである。
五つの謝罪言語
謝罪の言語1 後悔の念を伝える―「ごめんなさい」
謝罪の言語2 責任を認める―「私が悪かった」
謝罪の言語3 償いをする―「何をしたらいい?」
謝罪の言語4 真に悔い改める―「二度としないように努めます」
謝罪の言語5 赦しを請う―「赦してください」

「赦してください」と頼むことは、自分の非を認めることです。それは、自分が非難や罰を受けるに値する者だと認めていることを表してくれます。「私の意見では、〝ごめんなさい″ということばは自分の非をきちんと認めていないと思います。赦しを請うことが大切な理由は、あなたが二人の関係の将来を相手の手に委ねることを示すからです。
あなたは自分の間違いを認め、後悔の念を表現しました。償いをするとも申し出ました。しかし、あなたは今、「赦してくれますか」と相手に質問をしているのです。あなたが相手の代わりにその質問に答えることはできません。赦すか赦さないかは、相手が決めなければならないのです。それから先の二人の関係は、その相手の決断にかかっています。赦しを請うという行為によって、あなたは主導権を手放すのです。そして、そうすることにきわめて困難を覚える人たちがいます。

【赦しのことば】(コロサイ3:13 「互いに忍び合い、責めるべきことがあっても、赦し合いなさい。主があなたがたを赦してくださったように、あなたがたも同じようにしなさい。」)
 あなたの言ったことで私は深く傷つきました。でも、それはあなたにもわかっていると思います。だから、謝罪をしてくれてよかったです。あなたからの謝罪がなかったら、赦せなかったと思います。でも心から謝ってくれていると思うので、私はあなたを赦します。
 もう何も言う必要はないよ。君の謝罪がうれしい。君との関係がとても大切だから、君を赦すと決めた。
 あなたに本当に心からこう言えるとは思っていなかったけれど、言います。私はあなたのしたことで、本当に傷つきました。そんなことをするような人だとは思ってもみなかったから。でも私はあなたを愛しています。あなたの謝罪が誠実だと信じたいの。だから、あなたを赦します。
 君の仕事上のミスで、私は多くの時間と金を失った。しかし、この問題を起こしたことを赦してあげたい。君の修正プランを見た今、私は君を赦すことができるよ。
 あなたはプライドを捨てて、「僕が間違ってた」と言ってくれた。それがあなたにとってとても困難なことだとわかっているわ。だから、そうしてくれたことで、あなたへの尊敬が大きくなったわ。はい、あなたを赦してあげます。

二〇〇一年、ハワイのオアフ島沖で、愛媛県立宇和島水産高等学校の練習船えひめ丸(500トン)が急速浮上してきたアメリカ海軍の原子力潜水艦グリーンビル(7千トン)に衝突され、3分間で沈没した。えひめ丸乗務員35人のうち、教員2名、乗組員3名、17才の生徒4名が犠牲となった。また、救出されたうち9人がPTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断された。
 米潜水艦のスコット・ワドル艦長は、衝突の責任を問われ、事件調査後の2002年に海軍を辞任、クリスチャンの艦長は、弁護士や海軍の反対を押し切って、えひめ丸の犠牲者の遺族に直接謝罪するため来日する。ワドル元艦長は愛媛県宇和島のホテルで生存者四人と面会、涙をこらえながら深く謝った。直接謝ることで、PTSDの症状も緩和されることを願ったという。ワドル元艦長は事故直後、遺族に謝りたいと願ったが、軍がそれを許可しなかったため、辞任するまでは来日できなかったのだった。
ワドル氏は、宇和島水産高等学校の慰霊碑に献花し、謝罪文を読み上げた。しかし、学校側がその慰霊碑訪問を受け入れなかったため、そこには生存者も遺族もおらず、学校の職員も彼を迎えには出て来なかった。
 米空軍大佐の父を持つワドル氏は、日本で生まれ、一九七七年に海軍兵学校に入校、指導者には、誠実さと責任が必要不可欠であると学んだ。ワドル艦長は現在、講演活動を通して、「人生では、逆行したり、失望したりすることがある。しかし、それらの出来事自体は、私たちがどんな人間であるかを決めはしない。人がどんな人物であるかを決めるのは、それらの危機の後に、どうリアクト(反応)するかである。人が真に評価されるのは、成果ではなく、いかに苦難に耐え、誠実でいられるかどうかなのだ」というメッセージを伝えている。ワドル氏は、悔い改めと救い主を受け入れる大切さを行動で示した。
事故直後、ワドル艦長から直接謝罪を受けたある遺族はこう語る。「直接、近い距離で本人の誠意を見せていただいた感じで、ワドル氏の涙を見たときに胸のつかえが下りたような気がしました」と。

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