2021年御翼3月号その2

       

必要な資源はすべてあなたの心にある ―― N.V.ピール牧師

必要な資源はすべてあなたの心にある
① あなたの心の中に、必要なあらゆる資源を生まれながらにもっている、ということを信じよ。
② 信仰とノウハウによって、あなたの資源を活かせ。
③ 霊魂の力があなたの精神力と勇気を促すということを覚えておくこと。
④ いかなる場面をも乗り切る方法を考えるあなたの能力を軽視してはならない。
⑤ もし力が湧いてこなかったら、障害物を探し出し、取り除け。
⑥ 真に考えぬいたとき浮かぶ洞察力のひらめきを逃すな。
⑦ “~してさえいれば”をやめて、“この次は”に集中せよ。
⑧ 人生の試練は人を鍛えるもので、ダメにするものではない。
N.V.ピール『できると思えばあなたはできる』(ダイヤモンド社)p.209

 ピール牧師が、大学を出たばかりの頃、第一次大戦後、数年たっていた。彼は、従軍牧師として戦没将兵記念日の会合でお祈りをしてくれと頼まれた。大変な人出が予想されたが、当時、若くて経験の浅い自分でも、祈りならできると思っていた。会場に到着すると五万人が集っており、プログラムを見てみると、自分は当日の主賓ルーズベルト大佐の前に、演説をすることになっていた。ルーズベルト大佐は、セオドア・ルーズベルト大統領の令息である。当時大佐であったが、ルーズベルト二世は第二次大戦では大将に昇格、ノルマンディの戦いで戦死している。
ピール牧師は式典の司会者のところに飛んでいってまくしたてた。「私はただお祈りを捧げてくれと頼まれただけです。ところがこのプログラムで私は演説をすることになっているじゃありませんか」と。司会者は、「もしあなたがお話をするよう書いてあるのなら、そうなさるべきだと思いますけど」と言う。「私にはできません。話をするには準備がいります。私の代りに誰かに話してもらうべきでしょう」とピール牧師は主張した。
このやりとりを聞いていたのか、ルーズベルト大佐が、ピール牧師に尋ねた。「どうかしたのかね? 怖いのかね?」と。
「怖い? それどころじゃありません。これほどの大群集を相手では命が縮まります。それにあと数分というのに、話の内容をまとめるなんてとても無理ですよ」と牧師が言うと、「いや、できるよ。どうしたらいいか教えてあげよう。一つには、自分は恐れていないと君自身に言いきかせること、そして勇気をもちなさい。自信をもってやりなさい。そしてもう一つ、君自身のことを考えるのをやめることだよ」と大佐は答えた。
そして、彼は演壇の前に行って、私の注意を、大きくとった指定席に座っている婦人たちに向けさせた。「あの婦人たちのことを知っているかね? 彼女たちは戦死者の母たちなのだ。皆さん息子さんを戦争で亡くしている人たちだ」と大佐は言う。「彼女たちはこの戦没将兵記念日の午後、もう帰らぬ愛息のことを考えてあそこに座っている。多分、夜、抱いたり、あやしたり、寝かしつけた子どもの小さい頃のことを思い出しているだろう。彼女たちはさびしいのだ。悲嘆にくれている。彼女たちは孤独で悲しいのだ。この戦死者の毋たちに何か言うことはないかね? 君はきっと彼女たちを慰めることができる。君自身のことは忘れて、あのすばらしい母親たちに同情してあげなさい。それから立ち上かって、彼女たちのために話しなさい。この群集の中の他の人はすべて忘れることだ」とルーズベルト大佐は言った。そのあと、大佐は忘れることのできない偉大な真理を語った。「ノーマン君、君に必要な資源はすべて君の心の中にあるんだ。君はそれを引き出すだけでいい。きっとできる。話の内容は君の心の中にある。リラックスして、考えてごらん。そうすれば話が浮かんでくるだろう。勇気をもって考えなさい」と。「わかりました、大佐、やってみます。しかし、極めて短い話になりそうです」とピール牧師が言うと、「短ければ短いほど話は素晴らしくなるよ。しかし、全身全霊を打ち込むことだ。あの人たちに愛をおくりなさい。そうすれば、君の不安などふっとんでしまう」と大佐は言った。牧師が短いスピーチを終えると、大佐は、「君、素晴らしかったよ! よくやった!」と言ってくれた。ピール牧師は、自分自身を忘れ、他の人のために心から何か人生をより幸せにするようなことをしようというとき、その力は倍加されるのだ、と記している。
聖書に「神の国はあなたがたの中にある」(ルカ17・21)という言葉がある。それは、あなたが必要とする資源はすべてあなたの心の中にある。神の力が魂にある、という意味なのだ。

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