2021年御翼5月号その2

       

子どものように遊ぶ

 解放の神学の父グスタヴォ・グティエレスは、健全な霊性は「祈り、正義の活動、そして娯楽(友情、おいしい食事、遊びなど)」の三つのことを通して養うことができると指摘しています。しかし、大人になると、ただ楽しむだけの時間を取ることや遊ぶために何かをやめることに対して罪悪感を持ちます。殆どの大人たちは、遊ぶことの意味さえわからなくなっています。
 伝道者の書の中で、神が遊ぶ時を命じている箇所があります。「泣くのに時があり、ほほえむのに時がある。嘆くのに時があり、踊るのに時がある。」(伝道者3・4)私たちは、神が楽しそうに遊び心を持ってこの世を創造されたようすを見ることができます。山々や海、驚くような色とりどりのクジャクの羽、複雑で美しい人の表情はすべて、遊び心いっぱいの創造主がお造りになりました。イエスの生き方にも、遊びの価値や喜びの表現を見いだすことができます。イエスは食べては飲み、大いに楽しんだために、食いしんぼうの大酒飲みと嘲弄されました(マタイ11・19)。しかし、彼はそのどちらでもありませんでした。彼はただ人生を楽しみ、人々と共に過ごすことを楽しみました。イエスには果たすべき大切な使命がありましたが、仕事の最中に子どもと時間を過ごしたり、遊んだりする時間も取りました。キリストは今も、私たちクリスチャンや聖霊の働きを通して、遊び続けておられます。詩人ジェラルド・マンレイはこう書いています。「キリストは私たちの手足や顔を通して、あらゆる場所で遊びます。」霊によってキリストが私たちの内に住まわれるなら、私たちが遊ぶとき、私たちを通してキリストは遊ばれます。結婚式で牧師と共に祈っている時だけでなく、その後の披露宴でダンスを踊る時も、私たちは聖霊の管となることができます。私たちの遊びは、霊性から乖離(かいり)したものではありません。この世において、遊び自体が神の存在を表すしるしなのです。
 仕事と遊びの区別はどのようにつけるのでしょう。簡単に言えば、それを行うこと自体に目的があることが遊びだと私は定義しています。遊びの効用は多くありますが(脳の神経回路を発達させたり、免疫力を高めたり、創造性を高めるなど)、本来の遊びはそのような実用的な目的を持ちません。ビジネスランチのように、本当の目的が食事以外にあるようなものではありません。遊びは、親しい友人との食事のようなものです。今私たちがしていること、そのものに目的があります。遊びとは、何かがとても上手になることではありません。それをすること自体が目的であり、純粋に楽しむために行います。
 遊びは私たちを神に近づけ、神について瞑想することを助けます。一般的に瞑想の妨げとなるのが、自己に浸る思いです。遊びの効用の一つは、私たちの目を自分から離してくれることにあります。「試合を観たり、本を読んだり、音楽を聴くことに没頭したことがあるなら、どれほど時間がたったかとか、暑さ寒さをあまり感じなかった経験があるでしょう。それが、何かに集中している時の力です。瞑想の経験をあなたはすでに持っています」とイエズス会の神父であるウィリアム・A・バリーとウィリアム・J・コノリーは言います。瞑想を学ぶには、自分のことを忘れさせてくれる何かに集中することが一番です。神について瞑想することがむずかしいなら、自然や音楽、あるいは美術など、何か自分以外ものに神経を注いでみてください。自然、芸術、小説、映画、ペットも、自己から解放してくれ、瞑想することを教えてくれます。あなたが好きなことから始めてください。天気のいい日にお気に入りの公園を散歩したり、美しい音楽を聴いたり、あなたを笑わせてくれる子どもたちと時間を過ごしてみてください。それらのことをするとき、それらを与えてくださった神を思い起こしてください。惜しみなく与えられる神の愛を思うとき、私たちの遊びは聖なる道を開き、祈りへの架け橋となります。遊びは私たちが神の中で行動し、存在していることを十分に意識させ、感謝に導くものです。
 但し、自制心を失って依存症に陥ってしまうと、遊びも神から遠ざけるものとなってしまう。また、著者のケン・シゲマツ氏はヨットの操船を楽しむ(セーリング)が、ヨット・レースには出ないと決めているという。一番になること、だれかに認めてもらうことが目的になれば、それはもはや遊びではなくなるからである。何かを達成することがすべてという社会通念の外に、真の遊びが存在する。そして、遊びは人との絆を深め、回復力と瞑想を助け、自分たちの思いを神に近づけるのに有効となる。
今さら何をして遊んだらいいのかわからないという人は、子どもの時に好きだったこと、素直に喜びを感じたものを思い出そう。そこに、自分に合った遊びを見つけるヒントが隠されている。
ケン・シゲマツ『賢者の生活リズム』(いのちのことば社)より



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