2022年御翼2月号その2

 

「なれるとも!」三浦光世・綾子夫妻

  三浦綾子さんは20代の頃、ある方と婚約したが、別の青年とも、結婚の約束をした(二重婚約。但し、全て心だけのつき合い。)終戦直後、日本の軍国主義か米国の教えか、どちらが正しいのか分からなくなった。この際、学校の先生は辞めて、誰かのお嫁さんにでもなってしまおうか、と考えたのだった。そんないい加減さを警告されるかのように、婚約して間も無く、肺結核となり、13年間の闘病生活が始まった。
 病床において聖書を読み、罪の意識が欠けていたことに気づき、洗礼を受ける。「罪の意識のないのが、最大の罪ではないだろうか」と思い、キリストの十字架の意義が分かったのだ。今度は、きちんとした信仰を持って結婚をしたい、という思いになった。そして、夫となる三浦光世というクリスチャンと出会う。しかし、「自分は病人であり、無論、美しくもない。こんなわたしに異性を愛する資格も、愛される資格もない、と思った。子どもも与えられないだろう。だからわたしは、彼に自分の気持ちを打ち明けることは容易にできなかった」しかし、信仰によってすべては神が備えてくださることに確信を持った。三浦さんのことだって、きっと備えてくださると。すると、三浦さんの方から結婚の申し込みがあった。三浦光世さんは、以前から独身で一生を通すつもりでいたらしい。できれば、この汚れ多い世の中には深入りしたくない、信仰一筋に生きたい、という願いだった。だから、信仰をきちんと持ち続ける綾子さんに魅かれたのだ。「ぼくの気持ちは、一時的な同情ではないつもりです。美しい人なら職場にも教会にも近所にもいます。でもぼくは、それよりもあなたの涙に現れた美しい心を愛しているのです。なおったら結婚しましょう。あなたがなおらなければ、ぼくも独身で通します。」そして、二人で祈った。「神さま、御心のままになさってください。どうぞ私たちの愛を清め、高めて下さい。」長い闘病生活も遂に終わり、二人は結婚を発表した。13年間も闘病生活をして、38才になっていた綾子さんが結婚すると聞いて驚いたのは、綾子さんのご両親である。父親は「綾子がお嫁に? 相手は誰だ、人間か」と、決してふざけて言ったのではなかった。世の一般の男性がこんな娘をもらってくれるなんて、父には想像ができなかった。綾子さんは、今更のように真実な愛に打たれた。
 この夫がいなければ、綾子さんに作家への道は開かれなかった。結婚して、綾子さんは雑貨店を始めた。売上をのばすために酒の販売を考え、夫に相談すると、「駄目だね」ときっぱりと言われる。「売る必要はない。もちろん聖書にも、絶対に酒を飲むなと書いてあるわけではないが、綾子が酒を売ることはないんだ」綾子さん自身も、酒は嫌いではあったが、親を助けたいという思いだった。「親孝行の金は神が下さる。綾子、お前には酒を売る以外に仕事がないのか。もし綾子が酒を売らないなら、すべてはいいことになるよ」「そう、じゃ、小説家になれる?」「なれるとも」確信に満ちた夫の声だった。光世さんは、綾子さんが原稿を提出するころに、祈りながら聖書を読んでいたら、聖霊により示されたという。「なんでも祈り求めることは、すでにかなえられたと信じなさい。そうすれば、そのとおりになるであろう。」(マルコ11の24)「小説は入選する」というのだ。そして『氷点』が朝日新聞の1千万円懸賞小説に入選、二人の伝道活動が始まった。


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