2009年5月17日

 「自分たちの苦闘というものが、ほんの小さいながらも人間の文化に少しでも輝きを増させる。そういう歴史の中に生きているんだという考えがあれば、かなりの苦しさにも耐えていけると思う。僕は勝っても負けても、そういう気持ちでやってきた」と言うのは、卓球の国際的な普及に努め、ミスター卓球と呼ばれた故荻村伊智朗(おぎむらいちろう)氏である。
 そんな荻村氏がもっとも胸を打たれたのは、十字架から降ろされたキリストをマリアが膝に抱いて悲しむ、美しくて神々しいミケランジェロの彫刻を見たときだったという。
 「家を建てる者の退けた石が隅の親石となった」(詩篇118:22)とある。この世からは罵(ののし)られ、捨てられても、キリストは犠牲愛をもって救いの業を完成された。
 荻村氏がキリストを個人的な救い主としていたかどうかは分からない。しかし、犠牲愛に心を打たれ、自分の栄光のためではなく、世界平和を願って卓球をしていた氏は、やがて「ピンポン外交」と呼ばれる働きによって、中国との国交回復に貢献するのである。

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