2010年11月14日

 

聖霊のバプテスマに就て 内村鑑三

     大正12年11月10日『聖書之研究』280号 内村鑑三全集28巻より

 今年の夏、或る米国宣教師が私に問うて曰(い)うた「貴方(あなた)は聖霊のバプテスマを受けました乎(か)」と。
 私は之に答へて曰(い)うた「私は知りません。私は基督信者に成りてから今年で四十六年になります。其内三十年間私は基督教の伝道に従事しました。そして其間に私は教会又は伝道会社より未(いま)だ曾(かつ)て何等の補助をも受けませんでした。私は自分の生活費と伝道費とを自分の労働に由て得ました。御承知の通り私は此非基督教国に於(おい)て此事を為(な)したのであります。貴君(あなた)は私が或る形に於いて聖霊のバプテスマを受けずして此事を為し得たと御考へなさいます乎」と。 
 かの宣教師は私の此答を喜ばなかつた。聖霊のバプテスマに関する私の考は彼のそれとは異(ちが)つて居つた。私に取りては基督教は生くるか死ぬかの問題である。
 私は人に説くべき私独特の教義を有(も)たない。

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