2012年7月8日 望みの錨

内村鑑三「戦争廃止論」

 余は日露戦非開戦論者である許(ばかり)りでない。戦争絶対的反対論者である。戦争は人を殺すことである、爾(そ)うして人を殺すことは大罪悪である。爾(そ)うして大罪悪を犯して個人も国家も永久に利益を収め得よう筈はない。
 世には戦争の利益を説く者がある、然り、余も一時は斯(し)かる愚を唱へた者である、然しながら今に至て其愚の極なりしを表白する、戦争の利益は其害悪を償ふに足りない、戦争の利益は強盗の利益である、是れは盗みし者の一時の利益であって(若し之をしも利益と称するを得ば)、彼と盗まれし者との永久の不利益である、
 盗みし者の道徳は之が為め堕落し、其結果として彼は終に彼が剣を抜て盗み得しものよりも数層倍ものを以て彼の罪悪を償はざるを得ざるに至る、若し世に大愚の極と称すべきものがあれば、それは剣を以て国運の進歩を計らんとすることである。「萬朝報」(明治36年6月30日)より抜粋
 (マタイ16:26「人は、たとえ全世界を手に入れても、自分の命を失ったら、何の得があろうか。自分の命を買い戻すのに、どんな代価を支払えようか。」)

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