2016年9月18日 望みの錨

酒を飲まざる利益 明治35年8月31日『万朝報』 内村鑑三(抜粋)

〇酒を飲まざる利益の第一は経済である、…酒を飲まないために多少の慈善も出来る、又之(これ)がために書物が買へる…、酒を飲まざる利益の第二は健康である、…酒を飲まない者には病気の時に薬が非常に善(よ)く利(き)く、他人の三分の一か四分の一の分量で何(いず)れの薬品も彼の身体に十分の効を奏する、
〇酒を飲まざる第三の利益は品性である、勿論(もちろん)酒を飲む者は必ずしも士(し)君子(くんし)でないと云(い)ふのではないが、然(しか)し飲まない者の眼から見れば飲む人の或(あ)る時の態度は決して立派なるものではない、酩酊(めいてい)は確かに一時的発狂であつて、人の最も悪しき習慣は此時に方(あたっ)て発表せらるゝものである、
〇酒を飲まない第四の利益は交際である、酒は交際の機関であるなどゝは全くの嘘(うそ)である、酒は相互(あいたがひ)の弱点を現はす者で是がために真正(ほんとう)の嘆美(アドミレーション―たんび、感心してほめること)の念の起りやう筈(はず)はない、…嘆美の念なくして真正の友誼(ゆうぎ)は成立たない、酒に由(よつ)て結ばれたる友誼は虚偽の友誼である、之は酒と共に消え失(う)する友誼である、…
〇快楽のための飲酒、交際のための飲酒、習慣のための飲酒、是(これ)等(ら)は皆害有つて益がないから君子国の民は皆な之を廃(や)めたら宜(よ)からうと思ふ。

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