2017年4月29日 望みの錨

平和の使徒 ウオルサー

 日本が真珠湾を攻撃すると、ウォルサーはアメリカに強制的に送還される。祖国へ帰る交換船の中で、彼はこう演説した。
(一)世界中のクリスチャンは、キリストの精神を十分身につけるため、もっと  もっと信仰を実行しなければならない。理屈だけの信仰や形式主義的信仰に生きて、自分達はクリスチャンだの基督教国だなどとお高くとまることは、僭越(せんえつ)至極(しごく)だし、そんなことで非基督教国がついて来ると思ったら、甘っちょろい考と云うほかはない。
(二)他を責めたり審いたりする権利は神以外にはない筈だ。人も国も、互に他を許すと共に、自らの欠点に対する戦々(せんせん)兢々(きょうきょう)、畏れかしこんで、自ら足りないことを反省すべきである。
(三)従って、今回の戦争が、真珠湾攻撃をしかけた日本だけが悪いと思ったら大間違いである。
(四)従って暴(ぼう)を以て暴に報いるが如きやり方は、禽獣(きんじゅう)か未開の野蛮民族以外には断じてなすべきではない。武力闘争などと云うような野蛮極まるものを、キリスト教国と自負しているアメリカがすること自体、馬鹿馬鹿しいことである。日本は今勝っているが、今にアメリカが勝つかも知れない。その勝ったアメリカが、いつかは他国の武力の前に屈服するかも知れない。勝敗常なく、力による争いは循環小数が、留まるところがないことを、知らなければならない。
(五)我らは、暴力の否定と、融和の実現とに、全身全霊を捧げなければならない。之に対し断乎として邁進し、我らの説を圧迫するものに対しては、断々乎として、抵抗を行うべきである。
「悪に負けてはいけません。むしろ、善をもって悪に打ち勝ちなさい」
(ローマ人への手紙 12:21)              
           加藤恭亮『平和の使徒 ウオルサー』(教文館)よ

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