ニューヨークのスラム街に生まれ育ったビル・ドゥーナーは、信仰を持つ母親に育てられたが、飲酒を覚え、9才にして発酵リンゴ酒を売っていた。12才にはアル中となり、10代でマフィアのもとで様々な非合法的活動に加わり、21才のとき警察に追われ、銃弾を身に受けたこともある。23才でホームレスとなった彼は、ある晩、飛び降り自殺を決意する。
真夜中、彼は最後に散歩に出掛けようと、暗い夜道を横切ると、街灯の下に一人の男が立っているのが見えた。黒い服を着た見知らぬ男性の襟には、白い詰入りがある。この神父は、ビルを見つけるとそっと微笑んだ。それだけである。しかし、これだけでビルは心に何か神聖なものを感じた。神のご臨在を知ったのだった。彼の魂に神の平安が訪れ、彼の心が変わった。そこには、説教や叱責のことばはなかった。救いが訪れたのだ。彼は人生で初めて、自分を信頼してくれる存在を得たのだった。それは神であった。それ以来、飲みたい、という衝動は永久に消滅し、突如として、心深いところで神への信仰が生まれた。
34年後、彼は米国クリスチャン・ビジネスマン・オブ・ザ・イヤーを受賞、結婚し、妻と共に30年間暮らしている。彼のあらゆる夢は実現し、億万長者にもなっていた。これまでに、三人の米国大統領が、ビル・ドゥーナーを高官の地位に指名している。そして彼は、ホームレスを助けるため、6億円の寄付をし、自分が30年前に神を見出した同じ場所に、250ものベッドがある施設を造った。その施設は30年前、街灯の下に黒いスーツを着て立っていた神父の名をとり、マックデルモット・センターと名付けられ、マックデルモット神父本人が運営を任せられている。ドゥーナーはこう証言する。「自分は、神からみて価値のある人間だなどとは考えもしなかった。自分のセルフ・イメージはぞっとするほどひどいものだった。それが、神が手を差し伸べてくださり、私の心に触れてくださってから、全てが変わった」と。
人は神に信頼され、愛されていると感じたとき、その内面に変化が起こる。そして私たちクリスチャンは、神の愛を代表するためにこの世に存在する。神の御手が働くことを信じながら、人に懸ける者となろう。
Robert H. Schuller, Believe in the God Who Believes in You (Tennessee: Thomas Nelson, Inc. 1989)
御翼2023年七月号その1掲載