ニュースレター59号 P1~2
第8回矯風会JWCTU全国大会特集②
テーマ「過去を守り、現在に反映し、未来を形づくる」
第8回全国大会講演要旨
「矯風会からJWCTUへ ~画像でたどる130年~」
はじめに
2016年は、1886年に日本キリスト教婦人矯風会が設立されて130年に当たります。そのため、この第8回全国大会では、先人たちの尊い働きを、皆で一緒に学ぶ機会にしたいと願って、私が、「矯風会からJWCTUへ」という題でお話させいただくこととしました。もとより私一人では十分ではありませんので、佐藤トミヱ伊達支部長、刈谷三智子高知支部長、関根悠紀子埼玉西支部長、髙木道子牛込支部長に助けていただきます。
今年8月に行われた第40回世界大会のテーマは、「過去を守り、現在に反映し、未来を形づくる」でした。そこで語られたのは、「まずは自分の国の先人たちの働きを学ぼう」ということでした。そこで、第8回全国大会のテーマは、世界大会と同じものとしました。
WCTUとは
世界WCTU(Woman's Christian Temperance Union)に加盟する私たちの集まりは「矯風会JWCTU」と言います。「Woman」が単数であるのは、「一人ひとりが神とつながって活動する」という思いが込められているからです。テンペランスは、辞書を引くと「自制・節制」という意味も載っていますが、第一の意味は「禁酒」です。
WCTUの日本語訳は「クリスチャン女性禁酒同盟」で、矯風という意味はありません。けれども、日本にWCTUを設立した先人たちは、「わが国の悪しき風習を矯正せん」という心意気を込めて、この会の名称に「矯風」という文字を使って「日本キリスト教婦人矯風会」としたのです。
米国では1873年の終わりから1874年の初めにかけて、多くの州のクリスチャン女性が、アルコールによって引き起こされる破壊と闘うために立ち上がりました。熱心に祈り、酒場に行進し、酒を売らないように嘆願しました。多くの男性がその行為に諭され、酒を売る店を閉じました。彼女たちは最初は嘲笑されましたが、やがて尊敬すべき人々となりました。この禁酒運動を世界組織に広げたのが、フランシス・ウィラードです。
ウィラードは禁酒運動を推進するとともに、婦人参政権運動や、一日8時間労働の提唱にも熱心でした。ウィラードはその功績により、米国国会議事堂内の彫像ホールに、女性で初めて彫像が据えられ、その後53年間、彫像ホールの唯一の女性でした。
初代JWCTU会頭矢島楫子
「日本キリスト教婦人矯風会」の初代会頭は矢島楫子(かじこ)です。1886年 | 「東京婦人矯風会」設立(1893年全国組織となり、「日本キリスト教婦人矯風会」と改称)。 |
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1885年頃 | 足尾鉱毒事件発生。 後に第3代会頭となる潮田千勢子は、田中正造とともに被害者救済に奔走する。 |
1916年 | 大阪・飛田遊郭反対運動。 |
1921年 | ワシントン軍縮会議。当時89歳の矢島楫子 も参加。米国大統領に1万人の署名を手渡す。 |
1922年 | 未成年者飲酒禁止法成立。クリスチャンの根本正代議士が23年間もの長きにわたって法案を議会に提出し続け、ようやく成立。 |
1925年 | 禁酒を呼びかけるポスターを全国の小学校(およそ25,000校)に送る。守屋東(あずま)を中心に少年禁酒軍の働きが盛んになる。 |
1930年 | ロンドン軍縮会議。林歌子、ガントレット恒子が参加。平和使節として、18万人の署名を持参。(恒子は米国大使館書記のエドワード・ガントレットと結婚。英語力を生かして、矯風会の国際的な活動を支える。) |
1939年 | 満州人矯風会設立。この頃、日本の軍国主義化に伴い、矯風会はYMCA、YWCAとともに日本基督教団に統合され、世界との関連も削除される。 |
戦後の矯風会の活動 ~百周年まで~
戦後の矯風会の第一声は、「焼け跡から若芽が生えます」でした。これは、1945年12月発行のザラ紙8ページの『婦人新報』の巻頭の言葉です。1946年6月に林歌子の後を承けて第6代会頭に就任したガントレット恒子と会務理事を務めた竹上正子は、祈りによって、ある時は私財をなげうって、矯風会の戦後の復興に尽くしました。
1945年 | 12月、長年の悲願であった婦人選挙権獲得 (最初の行使は1946年第22回衆議院総選挙)。 |
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1957年 | 売春禁止法全面施行を記念して植樹を行う。久布白落実(くぶしろおちみ)純潔部長は売春禁止法の制定に邁進した。 |
1968年 | 日本で第24回世界大会。会場はホテルニューオータニ(東京)。 |
1986年 | 12月6日、霊南坂教会(東京・赤坂)にて矯風会設立百周年記念礼拝。『日本キリスト教婦人矯風会百年史』(百年史委員会委員長:佐藤正子)発行。 |
世界からの除名通告、JWCTUとして新生
百周年は多くの新聞にも取り上げられ、佐藤正子委員長(現矯風会JWCTU名誉会長)が新聞社のインタビューに答えている写真も残っています。また、百周年事業として、アジアからの出稼ぎ女性の駆け込みセンターとして「女性の家HELP」が開設されました。「自分を愛するように、あなたの隣り人を愛せよ」というキリストの教え(マタイ22:39)に従い、隣人愛を実践するものでした。
けれども、百周年を祝う中で日本キリスト教婦人矯風会は、世界組織の中で大きな問題を抱えていました。世界WCTU共通の三大目標のうち、「禁酒」を「酒害防止」に、「純潔」を「性・人権」に変えていたのです。それに加え、会員としてすべき禁酒の誓約へのサインをしないまま会員になった人も多くいたのです。世界からの再三の警告に従わなかった日本キリスト教婦人矯風会は、2000年に除名の通告を受けてしまいました。除名の翌年、2001年3月20日、当時のグウェン・ストレトン世界WCTU会長(英国)をお迎えして、JWCTUの発会式が行われました。100年以上に渡る世界組織の一員としての日本キリスト教婦人矯風会の流れは、「世界の平和・純潔・禁酒」を三大目標に掲げ、佐藤正子先生を会長とする、私たち「JWCTU(日本クリスチャン女性禁酒同盟)」に引き継がれたのです。そして、この会の源流を忘れないように、略称として「矯風会JWCTU」を使っています。
2000年 | 世界よりの除名通告。三大目標のうち2つを変更したこと、および禁酒の署名をしないままの会員の存在により。 |
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2001年 | 3月20日、JWCTU設立。 |
2001年 | 第35回世界大会(英国・バーミンガム) にJWCTUとして初の参加。 |
2002年 | 第1回全国大会。礼拝メッセージは佐藤陽二先生、講演会講師は荒川明子東京都中学校教諭(当時)。 |
2004年 | 第36回世界大会(ニュージーランド)。オーストラリアWCTUニューカスル副支部長クリスティナ・ネイラ博士との出会いがあり、博士のご奉仕でJWCTUニュースレター英訳版が世界に発信されるようになる。 |
2008年 | 5月、サラ・ウォード世界会長、マーガレット・オステンスタッド幹事(いずれも当時)を迎えての特別祈祷会(牛込キリスト教会にて)。 |
2009年 | サラ・ウォード会長(米国)執筆のフランシス・ウィラード伝『女性たちの代弁者』を翻訳出版。 |
2010年 | 第5回全国大会。JWCTU発足10周年を迎え、佐藤正子会長の任期満了に伴い荒川明子新会長就任。記念としてJWCTUバッジを制作(デザインは富士見聖書教会員三輪義也氏)。 |
2011年 | JWCTU発足以来顧問として支えてくださった牛込キリスト教会創立牧師である佐藤陽二先生召天。顧問の後任は佐藤順牧師。 |
2013年 | 第39回世界大会(オーストラリア・アデレード)で、東日本大震災で被災したクリスチャンファミリーの証し集『箱舟の中の家族たち』をネイラ博士が英訳した『Families in the Ark』を参加各国に1冊ずつ配付。 |
2014年 | 第7回全国大会。佐藤順牧師執筆のトラクト「エルヴィス・プレスリーの真実」を配布。エルヴィス・プレスリーは、酒を飲まず、本当はゴスペル歌手になりたかった敬虔なクリスチャンだった。 |
2016年 | 第40回世界大会(カナダ・オタワ)。エルヴィスのトラクト英訳版を配布。各国の出し物を披露するタレント・プログラムで、佐藤牧師がエルヴィス・メドレーを歌い、喝采を受ける。 |
2016年 | 『エルヴィスの真実~ゴスペルを愛したプレスリー』(ジョー・モスケイオ著)が翻訳出版される(あとがきは佐藤順牧師)。 |
将来に向けて
未来の矯風会JWCTU会員としての活動が期待される青少年会員の活動などを紹介します。
- 教会学校でアルコール、たばこの害について伝える。
- ポスター・ぬり絵コンテスト。全国大会のたびに、 三大目標に沿ったテーマで作成したポスターとぬり絵を紹介。
- 子どもさんびと禁酒の約束。全国大会午後の部の恒例のプログラム。青少年会員から成人して正会員になった人も。
- 高知学生ホームクリスマス。高知学生ホームは、矯風会高知支部の誕生とともに建設された長い歴史がある。現在も、クリスマスには牧師先生をお招きしてみことばが語られている。
講演会の準備をする過程は、私にとって、130年の歴史をもつ日本キリスト教婦人矯風会の過去・現在を学び、未来に思い馳せる恵みの時となりました。
矯風会の先人たちは、神の前に男女が平等で、きよい生き方をする世の中を作るために、知恵を絞り、あきらめることなく、三大目標の実現のために奮闘されました。その原動力は「祈り」です。今の世の中は、性の乱れ、酒や薬物の害によって引き起こされる事故や事件、いじめ等々、ともすれば、あきらめたり、長い物には巻かれろとばかり口をつぐんだりしたくなります。けれども、パウロは、「この世と調子を合わせてはいけません。いや、むしろ、神のみこころは何か、すなわち、何が良いことで、神の御前に受け入れられ、完全であるのかをわきまえ知るために、心の一新によって自分を変えなさい」(ローマ12:2)と私たちを励まします。
私たちは、矯風会JWCTUの一員として、先人の尊い働きに学び、三大目標の実現を目指して、日々力強く歩んでいきたいものです。 講演会の中で、次の4名の方がそれぞれの立場で、新生JWCTUとの関わりを直接、また、書面で語ってくださいました。